みどり湖畔に沿って走っていると、ふと空気が変わるような場所があります。
山あいの道の途中にたたずむ「御池様神社」です。
観光スポットとして大きく目立つ場所ではありませんが、立ち寄ってみると、
この土地の自然と歴史の両方が静かに重なっていることに気づかされます。
土地の記憶が静かに息づいている場所。そんな言葉がよく似合う神社です。

境内は派手さよりも、落ち着きと清らかさが印象的です。
社殿のまわりはよく手入れされ、落ち着いた時間が流れています。
山に囲まれた立地もあって、どこか外の音が遠のいたような感覚になります。
華やかさよりも、長く大切に守られてきた場所ならではの安心感がありました。
観光として訪れても、ただ「見る」だけではなく
少し足を止めてその場の空気を感じたくなる空間となっていて、
みどり湖周辺の景観とあわせて印象深い立ち寄り先になっています。

御池様神社は、もともと新豊根ダムの建設によって水没した集落にあったものが、今の場所に移されたのだそう。
かつて曽川の集落には池があり、そこに「お池明神」と呼ばれる龍神様がおられたそうです。
ダム建設に伴って、その龍神様のほか、石仏や石塔などもこの地に祀られ、今の御池様神社になったとされています。
みどり湖周辺の案内でも、「曽川御池大明神」は元はダム建設で水没した村にあった神社だということが読み取れます。
龍神を祀る神社として知られ、春分の日と秋分の日には大祭が行われています。

新豊根ダムは、昭和44年に着工し、昭和48年8月に竣工しました。
とても大きなダムで、現在はみどり湖周辺の景観をつくる存在でもあります。
一方で、その湖の下には、かつての暮らしや集落の記憶が眠っています。
御池様神社は、そうした“失われた風景”と今の風景をつなぐような、とても象徴的な場所です。
みどり湖の景色を眺めるとき、この神社のことを少しでも知っていると
見える風景の深さが変わります。
そして現地を訪れると、豊かな自然の美しさだけでなく、
この土地で生きてきた人たちの祈りや記憶にもそっと触れられる気がします。
みどり湖を眺めながら、ここにあった昔の暮らしへ思いを巡らせる。
御池様神社は、そんな時間をくれる場所です。