山間地域の豊根村。主要道路を通るだけでは見つけにくいのですが、村内には畑が点在しています。
育つ野菜も実に様々。特に夏野菜はトマト、ナス、ピーマン、かぼちゃ、とうもろこし、そしてきゅうり。等々
決して広大ではない山あいの畑で、夏野菜は太陽の光を浴び、雨を受け、ときには草や虫と競いながら育ちます。平らな畑ばかりではなく、石の多い場所や傾斜地もあります。それでも育つ野菜は、驚くほどたくましいものです。
形は少し曲がっていたり、大きさがそろっていなかったり。それでも、切ればみずみずしく、口に入れると野菜の味がしっかりと感じられます。
見栄えよりも、味と生命力に美しさが宿るといったところでしょうか。
豊根村の夏野菜には、山の暮らしによく似た力強さがあります。
きゅうりとの追いかけっこ
数ある夏野菜のなかでも、とりわけ勢いがあるのがきゅうりです。
恐らく平野部でも似たところで、朝には「まだ少し小さいかな」と思っていた実が、その日の夕方か翌朝にはうんと大きくなっている。数日畑を見ないでいると、葉の陰から腕のように太い一本が現れていることもあります。
一本、二本なら、夕食の一品となってすぐになくなります。しかし、採れる日は一度に何本も採れるのが夏のきゅうり。
毎日の食卓に並べても、収穫の勢いにはなかなか追いつきません。
そこで少しでも長く保存するために、塩で揉み、浅漬けにしたり醤油や酢に漬けたり、その日の味から数日先の味へと変えていきます。
たくさん採れたものを無駄にせず、おいしくいただく。そのための知恵としての、漬物です。
ずんぐり太い「昔きゅうり」

豊根村では、「昔きゅうり」と呼ばれる、太くてずんぐりとしたきゅうりに出会います。
夏になれば道の駅の直売エリアでも目にすることができます。
スーパーで見かける細くてまっすぐなきゅうりとは、ずいぶん違った姿です。表面の色に濃淡があり、手に持つとずっしり。採り遅れて大きくなったものではなく、もともと太く育つ昔ながらのきゅうりです。
見た目は少々ごついものの、中には水分をたっぷり含み、厚い果肉には食べ応えがあります。若いうちは生でみずみずしく、大きくなったものは漬物や炒め物、煮物にも向いています。
皮がかたいときは、ピーラーで縞模様になるように皮をむきます。また種が大きいため、食べづらさを感じる場合は縦半分に切り、スプーンで中心部分を取り除けば食べやすくなります。
きゅうりと呼びつつも、まさに瓜のひとつとして扱いやすい昔きゅうり。
規格や流通の都合からは少し外れてしまう野菜ですが、土地の暮らしに残る種と、家々の畑によって受け継がれてきた味でもあります。
基本の浅漬け
採れたてのきゅうりは、やはり浅漬けがよく似合います。また、どんどん獲れるきゅうりは、とりあえず塩でつけておくと後々も使いやすいものになります。
歯を入れたときの、ぱりっとした音。噛むほどに広がる水分と、夏らしい青い香り。凝った味つけをしなくても、きゅうりそのもののおいしさがよく分かります。
材料
- きゅうり お好み
- 塩 きゅうりの重さの約2~3%
- 昆布(お好み) 3センチ程
作り方
- きゅうりを薄くスライス、もしくは食べやすい大きさに切ります。
- 保存袋にきゅうり、塩を入れます。
- 袋の上から軽くもみ、昆布も入れて、袋の空気を抜いたら冷蔵庫へ入れます。
- 30分ほどで軽い浅漬けに、一晩置けばしっかり味がなじみます。
昔きゅうりを使う場合は、川を縞模様に剥き、少し厚めの半月切りにすると果肉の食感を楽しめます。
ここにしょうが、みょうが、山椒の実等をお好みで加えてつけておくと、味のバリエーションもうんと増えます。(後から和えるでもOK)
夏の恵みを、最後の一本まで
雨の翌日に一気に実を太らせ、葉の陰に隠れながら、次々と収穫を待っている。一本のきゅうりにも、山の短い夏を逃すまいとするような勢いがあります。
採れたてをかじり、残った分は漬物にする。太くなった昔きゅうりも、立派なひと皿になります。
食べ切れないほど採れることさえ、夏の豊かさの一つ。
浅漬け、きゅうちゃん漬け、山椒漬け・・・味を変えながら、今年も山の恵みを最後の一本までいただきたいものです。





